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10月15日 興聖寺開堂の日

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今日は10月15日ですが、母校の駒澤大学は開校記念日だそうです。

さて、合わせてですが、今日の日付を見ると思い出すのが、道元禅師による宇治・興聖寺開堂であります。なお、最近書かれた道元禅師の伝記・略年表を見ると、だいたいこうなっています。

寛喜3年(1231) 深草の安養院に入って『弁道話』執筆
天福元年(1233) 深草の極楽寺旧址(観音導利院)に落ち着く。
文暦元年(1234) 懐弉禅師、観音導利院に行き道元禅師に弟子入り。
嘉禎2年(1236) 10月15日、興聖寺を開堂して集衆説法す。

でも、おそらく、最初の「安養院」については、実際に現存している欣浄寺さまには申し訳ありませんが、何かの誤解でありましょう。そもそも、『弁道話』の写本・版本を見ても、これがどこで説示されたかは分からないのであります。それどころか、正法寺本は興聖寺で説いたことにもなっています。しかし、上記の略年表を見て分かる通り、興聖寺が正式に開堂するのは、1236年になりますので、『弁道話』執筆の段階ではまだ、影も形も無かったことでしょう。

それから、1233年に極楽寺旧址に入ったことは、瑩山禅師『伝光録』などが等しく認めるところで、更にいえば、この段階で『正法眼蔵』の執筆(最初は「摩訶般若波羅蜜」巻、続いて「現成公案」巻)が始まりますので、何かしら、落ちつける環境になったといえましょう。さて、それで、今日採り上げたいのは、この10月15日の、興聖寺開堂の話です。「開堂」というのは、修行道場としての寺院に、修行僧を集めて開くことを意味します。道元禅師の場合、以下のような状況だったと伝えられています。

 師、嘉定二年丙申十月十五日において、始めて当山に就いて、開堂拈香、祝聖し罷って、
 上堂。山僧は、叢林を歴ること多からず。只、是、等閑に、天童先師に見えて、当下に眼横鼻直なることを認得して人に瞞ぜられず、便乃、空手にして郷に還る。所以に一毫も仏法無し。任運に、且く時を延ぶ。朝朝日は東に出て、夜夜月は西に沈む。雲収まって山骨露われ、雨過ぎて四山低る。畢竟如何。
 良久して曰く、三年、一閏に逢い、鶏は五更に向かって啼く。久立下座。
    卍山本『永平広録』巻1-1上堂

こんな感じです。祖山本『永平広録』ですと、ただの「集衆説法」ですが、卍山本ですと上記のように、「開堂拈香、祝聖し罷って」と、開堂の説法になっています。なお、「始めて当山に就いて」とはありますが、実際には以前からこちらに住んで準備を調えていたはずですので、この文章は、あくまでも開堂の側に掛かる文言として理解されなくてはなりません。

実際、興聖寺開堂の日、会下にいた僧衆はどれほどの数かは知られておりません。後には、瑩山禅師が『伝光録』で指摘するように、50人以上になったようですが、それはまだ先の話だと思われます。それどころか、『正法眼蔵随聞記』では、この年の除夜(12月30日)に、興聖寺最初の首座として懐弉禅師が拝請される経緯を伝えますが、その中で道元禅師は懐弉禅師に対して、「衆のすくなきにはばかる事なかれ。身、初心なるを顧みる事なかれ。汾陽は纔に六・七人、薬山は不満十衆なり。然れども仏祖の道を行じて是れを叢林のさかりなると云ひき」(巻5)と指摘します。

つまり、10月に開堂したものの、その年の年末では上記のような人数、10人以下でもって、興聖寺が運営されていた可能性があるわけです。しかし、叢林の盛衰は、その僧衆の数では無くて、どれほどに「仏祖の道を行ずるか」に掛かっているわけです。その観点から見れば、現代であっても、我々はややもすると、数の多さで成功を考えたりすることがあることでしょう。されど、それは、基準としてはそれほど重んじる必要は無いのです。

そこで、先に挙げた開堂の上堂の内容ですが、実はこれは、先に挙げたような、今から叢林の修行が始まるぞ、というには、ちょっと感動が足りないものです。ただ、因果歴然の事実を以て、仏法だと述べているだけだからです。その意味では、祖山本巻1-1上堂の方が、よほど感動に満ちているといえましょう。そちらは、叢林修行が奏でる諸々の音が、仏陀の説法だと述べているからです。

などなど申し上げましたが、曹洞宗の叢林修行は、10月15日に始まりました。それをただ申し上げたくて、記事にしたのであります。

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これまでの読み切りモノ〈曹洞宗8〉は【ブログ内リンク】からどうぞ。

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