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『曹洞宗宝暦』を活用しよう

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今月の『曹洞宗報』にも、頒布募集の告知がされていましたが、拙僧自身、『曹洞宗宝暦(以下『宝暦』と略記)』は、活用させていただいています。理由は、こういうブログを書く時、その日の「宗門的行持」として何があるかを知るには、『宝暦』はとても良いのです。いや、宗門だけではありません。他の宗派にも因んだ仏教的行事であれば、色々と情報が詰め込まれています。1月なんか、凄いですよね。「●●初め」とか「初■■」的な行事の目白押し。

この毎月のカレンダーの上には、その月に因む「月々の法話」(増田友厚老師)、或いは「仏教からでた言葉とりびあ」が掲載されていまして、色々なことを考えさせてくれます。そして、図柄入りの「坐禅のすすめ」と、「お仏壇のまつり方」と、これだけあれば、檀信徒としての生活は十分であります・・・いやまぁ、だけだと困るか?では、合わせて『檀信徒必携』もどうぞ。

さて、「暦」といえば、思い出されるのがこの話。

暦日は短促なりといへども、学道は幽遠なり。
    道元禅師『正法眼蔵』「身心学道」巻

この場合「暦」は、カレンダーの意味では無くて、文字通り日送りの意味で用いられていますが、我々の人生はたかだか数十年、それほどに短いのに、学ばねばならないことは深いのであります。限られた時間の有効利用をし、出来るならば、仏道に捧げねばなりません。しかし、そのような日送りに気を付けていても、今度は、自らの行履に集中できません。

 大梅山は慶元府にあり。この山に護聖寺を草創す、法常禅師その本元なり。禅師は襄陽人なり。
 かつて馬祖の会に参じてとふ、如何是仏、と。
 馬祖いはく、即心是仏、と。
 法常、このことばをききて、言下大悟す。ちなみに大梅山の絶頂にのぼりて、人倫に不群なり。草庵に独居、松実を食し、荷葉を衣とす。かの山に小池あり、池に荷おほし。坐禅辨道すること三十余年なり。人事たえて見聞せず、年暦おほよそおぼえず、四山青又黄のみをみる。おもひやるには、あはれむべき風霜なり。
    『正法眼蔵』「行持(上)」巻

これは、道元禅師が尊崇して止まなかった祖師の1人である、大梅法常禅師の道業を讃歎する文章です。大梅禅師は、馬祖道一禅師の弟子でした。そして、或る時「如何なるか是、仏」と聞いたところ、馬祖は「心、即ち是れ、仏なり」と答えています。この一句でもって、仏道の真意を深く悟った大梅禅師は、大梅山の山頂に行き、誰にも会わずに修行をするようになったのです。

それは、文字通りの自給自足生活であり、草庵に住み、松の実を食べ、荷葉を着物とするという徹底ぶりでした。いや、本人の意に関わらず、そういう場所に行くと、それくらいしか無かったのでしょう。そして、何をしていたかといえば、坐禅弁道を続けていたのであります。坐禅弁道は30年以上に及び、この段階で、年月を忘れるほどであったとされています。道元禅師は、この修行を思いやるに、何とも言いようの無い感傷を得たようです。

「暦」というのは、一方では把われることで、我々自身の「時間の無さ(=無常迅速)」を自覚させ、修行を進ませるものですが、もう一方で時間を忘れ、日常の修行にただお任せするということも必要です。多分に、前者から入り、後者に抜ける感じでしょうか。中国禅宗の、趙州従諗禅師に、「十二時(=1日)を使いこなすか?使われるか?」という問答がありますが、これも同じことです。

趙州、因みに僧問う、「十二時中、如何が用心せん」。
州云く、「你、十二時に使わるる、老僧、十二時を使得す。你、那箇の時を問う」。
    『永平広録』巻3-245上堂

もう、そもそも「時間」について、把握の仕方が違うので、議論にもなるまい、という趙州禅師の大変に厳しい言葉。いや、厳しいというより、何かこう、突き抜けた感じというべきなんでしょうかね。まぁ、趙州禅師といえば、その師匠である南泉普願禅師も、その師である馬祖禅師から、「唯だ普願のみ、独り物外を超えたり」というようないわれ方をする、どこか突き抜けた人でしたが、そういう宗風は、得ようと思っても得られず、参究しても参究できず、でも、百不当の一当を得るために、学ばねばならないのです。

『宝暦』から始まったこの記事ですが、せっかく配布するのなら、中味を知ってお勧めしたいものです。よって、こんな記事を書いた次第です。

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これまでの読み切りモノ〈曹洞宗7〉は【ブログ内リンク】からどうぞ。

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