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釈迦如来の真の報土とは?

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「報土」というのは、仏の浄土の1つであり、菩薩が立てた誓願が完成されるとき、菩薩はそのかつての誓願に応じて独自の仏になる。その仏の住むところをいう。例えば、この我々が生きる娑婆世界は、「忍土」とも翻訳されるように、苦に満ちた世界であるという。釈迦如来が、四聖諦の最初に「苦諦」を説くのはそのためであるが、しかしながら我々は釈尊が敢えてこの世界にお生まれになったと考えている。

この深心といふは、裟婆世界なり。信解といふは、無廻避処なり。誠諦の仏語、たれか信解せざらん。この経典にあひたてまつれるは、信解すべき機縁なり。深心信解是法華、深心信解寿命長遠のために、願生此裟婆国土しきたれり。
    『正法眼蔵』「見仏」巻

これは、『妙法蓮華経』に関連して説かれている「願生」の話であるが、『法華経』に出会うために、願ってこの世界に生まれてきたという話である。ただ、この「願生此娑婆国土」の語については、出典は良く分からず、おそらくは『妙法蓮華経』「分別功徳品」から前後の文脈を引用された際に、その取意としていわれたものと考えられている。だからこそ、我々にとってこの娑婆世界は、釈尊が敢えてお生まれになり、救済をもたらしてくれる場所として理解出来るのだが、いわゆる大乗経典で説かれる「浄土」という考えからすると、やや苦しさが先行してしまうように思う。そこで、このような教えが説かれるに到る。

 釈迦如来の真の報土は[願往生]
 清浄荘厳の無勝これなり[無量楽]
    善導大師『般舟讃』

これは、中国浄土教を大成した善導大師による、浄土を願生し、阿弥陀仏の徳を讃歎する特別の行法を示したものである。その中にある讃文は、七言一句の偈頌の形式で編まれていて、引用してみた。ここで、善導大師は、釈迦如来の「真の報土」は、清浄荘厳の「無勝」と呼ばれる浄土であると指摘している。これについて、『浄土真宗聖典』の註記を見てみると、「無勝荘厳国」のことであるとし、西方四十二恒河沙の諸仏の国土の彼方にある、釈迦如来の浄土であるという。詳しいことを仏典に当たると、次のようにあった。

善男子、西方に此の娑婆世界を去って三十二恒河沙等の諸仏の国土を度り、彼れに世界有り名づけて無勝と曰う。彼の土、何の故に名づけて無勝と曰うや。其の土、厳麗有る所の事、皆悉平等にして差別有ること無し。猶お西方の安楽世界の如し、亦、東方の満月世界の如し。
    『大般涅槃経』巻24

以上の引用文では「三十二」となっているが、諸本によっては「四十二」の場合が多いようであり、註記はそうなっている。さて、このように、この娑婆世界を西方に去って、無勝という荘厳仏土があるのである。その往生に必要な「十事の修行」を世尊は説くに到るのだが、善導大師はこの浄土を、釈尊にとっての真の報土であるという。では、今のこの世界は、いつ浄土になるのか?『大般涅槃経』では、慈氏菩薩(=弥勒如来)が、後に現れて、この世界を浄土にするという。

『般舟讃』で、善導大師が敢えて、この釈尊の「真の報土」を説くに到ったのは、多分にこの浄土では無い娑婆世界に現れた釈尊であっても、実は浄土を冀求していたのだと示すためにあったものと思う。浄土教の基本は「厭離穢土、欣求浄土」にあり、その基本線は善導大師も繰り返し示すところである。

もろもろの行者にまうさく、凡夫の生死は貪るべからざれども厭はず、弥陀の浄土は軽んずべからざれども欣はず。厭へばすなはち娑婆永く隔たり、欣へばすなはち浄土つねに居す。
    『般舟讃』末尾の説示

凡夫の生死というのは、貪るべきでは無いのに、(この世界から解脱したいと)厭おうとしておらず、弥陀の浄土については軽んずべきでは無いのに、(往生したいと)願っていないとし、転じて、(娑婆世界を)厭えばすぐに永く隔たることが出来、(極楽世界を)願えばすぐに往生するとしているのである。そして、それは阿弥陀仏の存在を我々に説き示した釈迦如来も同様であり、その応現の仏に合わせて、我々も浄土を願うべきだということになる。この辺は、綱引きのようなところがあって、やっぱり敢えてこのような忍土に生まれた釈迦如来を讃歎する経典(『非華経』)もあるし、今回見たように、浄土の側に引っぱろうとするところもある。だから、もう「法身遍満す」で良いじゃない・・・とか思ってしまう。

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