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出家功徳と師の責任について

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この記事は、書いている拙僧が、「正義を振りかざす人へ嫌悪感を抱いている」ことを認識・理解した上でお読みいただきたい。

我が曹洞宗には「出家功徳」という考え方がある。これは、出家することがこの上ない功徳であることをいうのだが、場合によっては、師の側から、弟子に迎えたいとまでいうことがある。無論、弟子の数の多さを競うわけでは無いが(いや、そういう勘違いをしている人もいるか)、それはやはり、出家することが仏道修行上、無上の功徳を持つためであろう。

あきらかにしりぬ、出家の功徳、ただちに三世諸仏にちかしといふことを。
    『正法眼蔵』「出家功徳」巻

道元禅師はこのように示され、とにかく出家の功徳を主張するのである。そして、問題はここからである。このような道元禅師の言葉を、真面目に真に受けて、有象無象に対し、出家を推奨したとしよう。その時、出家して貰った人が自ら出家という立場を「悪用」し、自らのエゴイズムを満たすような活動をしたとすればどうだろうか?その典型的な例が以下の一件である。

・【「「妻帯は厳禁」永平寺に求める訴訟却下」について

まぁ、これはとんでもない話だが、この訴えた人、記事の一部では僧侶となっていたが、どうも個人的な調査では既に曹洞宗の僧侶では無いらしい(僧籍が切れた?)。だから、もし本当に僧侶なら、曹洞宗以外の僧侶ということになるだろう。で、この人の主張、これが荒唐無稽である。一見すると、妻帯(夫帯)はけしからん、よって、この人の言っていることが正しいと思う人もいるかもしれない・・・拙僧は、そういう短絡的思考を弄する人こそ不幸だと考えるのである。

理由だが、我々大乗仏教の菩薩には妻帯(夫帯)を禁止する戒律は無い(まぁ、だから厳密な意味で出家主義では無いという人もいるが、拙僧からすれば、声聞戒的な出家観の方に未熟さを感じる)。無論、「不貪婬戒」を字義通りに解釈して、夫婦間の性交渉をも禁止すると主張する人がいるが、これは我々にとっての「十重禁戒」の一つでしか無い。声聞戒の「四波羅夷」では、殺人や性交渉、重窃盗、大妄語などを教団追放の罪としているが、我々にとっての「波羅夷罪」は、十項目あるのである。そして、その内には、「他の菩薩の罪過を指摘してはならない」という「不説過戒」もあるし、「自分だけが正しく他人が間違っていると主張してはならない」という「不自讃毀他戒」もある。

要するに、妻帯(というか繰り返しになるが、問題なのは法律上の「入籍」ではなく「性交渉」なのだろうが)の問題点を指摘したこの人は、同時に二つの重禁戒を犯すに到った。一つ犯せば大罪で、菩薩の生命を失うとされるのに、それが二つである。まさに、戦慄すべき事態である。また、同じ僧侶を毀謗することは、「謗三宝」にもなることを考えると、三つ同時だろうか?ここで、「妻帯しているのは僧侶では無い」などという暴言があるだろうが、現在は「信教の自由」がある。出家など如何様にも各宗派で「定義可能」である。よって、妻帯を許容する定義が嫌なら、その宗派を離脱すれば良いだけのこと、批判なんかする余地は無い(ここにも「信教の自由」が働くため)。我々には、その行動が犯罪では無い限り、宗教を批判することは出来ない。ただ納得し、自らに於いての帰入の有無を問うだけなのだ。

よって拙僧は、この人が一度でも曹洞宗で出家したことの問題点を主張したい。これも独自調査で正確を期さないが、この人は一度出家をしたときの師匠も、その師匠(師翁)も、ともに妻帯し、子供もいるという。そうすると、宗門や本山を批判する前に、まずは師匠から何とかすべきだったのではなかろうか?いや、師匠が妻帯していたということは、その人か授かった菩薩戒に、本当に妻帯を禁止するような意図を込められていたかが怪しい。

そうなると、拙僧は師匠の責任を問いたくなってくる。その辺、師匠はよくよく弟子を指導すべきだったのでは無いだろうか?戒の条文についての解釈を正しく教え、その一々を等しく守るべきだという話である。我々は「和合僧」である。これは馴れ合いを意味しないが、しかし、特定の僧侶が他の僧侶を批判し、蹴落としてまでその人本人が持つエゴを実現させることを許すほど甘くも無い。この意味で、永平寺を訴えた僧は、余りに罪深い。それは同時に、師匠の罪をも意味するように思うのだ。

※さて、この記事の言わんとするところの真意、それは読者の方が一読して感じられた「違和感」、それは拙僧に対するものでも、御自身に対するものでも、或いはこの訴えた人に対するものでも良いが、それを大事にして貰いたいということである。

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これまでの読み切りモノ〈曹洞宗8〉は【ブログ内リンク】からどうぞ。

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