新年明けましておめでとうございます（平成25年度版）

皆様、新年明けましておめでとうございます。

平成２５年癸巳の「新春」でございます。

何故、「新春」と表現するかといえば、旧暦では、新年と立春とが同じである場合が多く、よって、元旦は、同時に新たな「春」の幕開けでもあったのです。今は、立春の時期が２月頭にずれてしまいましたので、言葉だけが残った格好です。

さて、旧年中は、拙ブログ「つらつら日暮らし」、及び、「つらつら日暮らしWiki〈曹洞宗関連用語集〉」をご愛顧いただきましてありがとうございました。一昨年には東日本大震災が起き、昨年はまさにその復興への道筋が付けられるかと思っておりましたが、政治的な指導力の無能からか、まだまだこれからでございます。毎年の新春に、「復興元年」ならんことを、ただ祈っております。

拙ブログとしては、１年間、ほぼ平穏無事に運営できましたことは、ひとえに読者の皆様のおかげでございます。そして、御礼を申し上げながら恐縮ではございますが、本年もよろしくお願いいたします。

それでは、早速本年最初の記事を見ていただきましょう。

　維那、『当塗王経』を諷誦し、遶行すること三遍。
　牓に云く、
　山門、伏して以れば、元正、祚を啓いて、歳に山門の光輝を倍し、万物咸く新たにして、日に、皇道の太平を賀す。江湖、醤を合わせ、山林、塩を蒔く。五穀、これが為に豊熟し、六味、これが為に調和す。誠なる哉、一人、慶びあれば、兆民、頼あり。陰徳、冥顕に被り、南山、恵み厚く、陽報、風雨を賦ぎ、北嶽、覆うこと遠し。
　上、梵釈・四王・竜天八部、中、日本国中の大小の神祇、当境の諸神、合堂の真宰、本寺の檀那、諸堂の檀越、田を捨てるの諸檀、結縁の道俗、合山清衆の本命元辰、当年の属星、下は、堅牢地神に至るまで、真観清浄の観、各おの正眼を明かし、梵音海潮の音、同じく法雷を震い、妙に『当塗王経』の妙功を布き、普ねく普門示現の福聚を施さん。
　諸大衆、雷同して『当塗王経』三巻を諷誦するは、永平の恒規なり。
　　　　禅林寺本『瑩山清規』「歳朝祝聖修正会」

『当塗王経』というのは、『妙法蓮華経』「観世音菩薩普門品」の別名です。中国の故事に関係があるそうですが、ここでは述べません。というか、正しく述べる自信が無いので、別の機会に取り上げます。ここで、瑩山禅師がいわれていることは、要するに新年を迎え、その中で『観音経』を読み、その功徳を、諸天善神に回向することを説いているわけです。そして、その結果、諸々の存在が清浄観を獲得し、素晴らしい法雷を震って、あらゆる存在に、素晴らしい功徳を及ぼすことを願う内容だといえます。

そういえば、現在だと「大般若会」であるわけですが、当時は『観音経』のみだったようです。確かに、『観音経』は「護国経典」として知られており、非常に有効な経典ですから、過不足は無いと思いますが、それを実現させるための、瑩山禅師会下での坐禅修行は、大変に厳しいものでございました。同じ『瑩山清規』「日中行事」を見ると、それは良く分かります。どうも、衆寮で休む時間が、読経に充てられているだけで、基本、『弁道法』と大差なかったのでは？と思ってしまいます（『弁道法』は具体的な時間がほとんど分かりません）。

さて、このように供養を施すことは、同時に、この国の幸いと、民衆の幸いと、同時に、叢林の幸いを願うものでした。ここが切り離されずに考えられているところに、瑩山禅師に於ける大乗仏教性＝菩薩性が見えます。そして、更に「永平の恒規」とあるように、道元禅師の時代からの永平寺も同じだったようです。ですから、ここには、伝統も見えるわけでございます。お正月から、とても良い教えを学べたと、拙僧は満足しております。

そして、末尾ではございますが、「大吉」の語を以てお祝いいたしたく存じます。

南謨仏法僧宝は大吉、立春は大吉、一家の祖師祖宗は大吉、仏法の弘通は大吉大吉、祖道の光揚は大吉、寺門の繁昌は大吉、門子多く集まり人の逢うを得たる時、天下吾が道に帰崇するは大吉大吉。
　　大吉立春大吉。
　大吉開山、永平大吉。道玄
　　　寛元五年丁未立春、大吉大吉。
　　　　道元禅師『立春大吉文』

道元禅師もこのように、立春大吉を祝ったわけですが、拙僧も同じく、歳朝大吉を祈りたいと思います。合掌

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