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「過去七仏の儀式」の話

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曹洞宗の室内三物の話は、余りこういうところでは書きたくないのだけれど、ちょっとだけ書くと、『大事』という一物がある。その上段には、「過去七仏之儀式」と書いてある場合が多いと思う。それで、詳細は勿論何も書かないけれど、拙僧個人的には、この「過去七仏之儀式」に関連した情報に、興味関心があるわけである。そもそも、道元禅師の75巻本『正法眼蔵』の体系であれば、釈迦牟尼仏は迦葉仏から面授嗣法したことになっているので(「嗣書」巻参照)、ここで釈尊はまさに、過去七仏の一として数えられている。

それが証拠に、『正法眼蔵』「仏祖」巻では、このように示されている。

 毘婆尸仏大和尚 此云広説。
 尸棄仏大和尚 此云火。
 毘舎浮仏大和尚 此云一切慈。
 拘留孫仏大和尚 此云金仙人。
 拘那含牟尼仏大和尚 此云金色仙。
 迦葉仏大和尚 此云飲光。
〈七仏〉釈迦牟尼仏大和尚 此云能忍寂黙。

つまり、道元禅師が「この仏祖を礼拝頂戴することを究尽せり。唯仏与仏なり」(同巻)とされる唯仏与仏は、過去七仏を前提に説かれていることになる。同じく、このような「儀式」についての記載は他にもある。

いまわが洞山門下に、嗣書をかけるは、臨済等にかけるには、ことなり。仏祖の衣裡にかかれるを、青原高祖したしく曹渓の几前にして、手の指より浄血をいだしてかき、正伝せられけるなり。この手の指血に、曹渓の指血を合して書伝せられける、と相伝せり。初祖・二祖のところにも、合血の儀おこなはれける、と相伝す。これ、吾子参吾などとはかかず、諸仏および七仏のかきつたへられける嗣書の儀なり。
    「嗣書」巻

道元禅師は、中国で見た『嗣書』の書式(主に臨済宗のが多い)について、自派(曹洞宗)についてのものはほとんど書いていない。せいぜいが、ここで見える「わが洞山門下」と書いてある(ここが、実は明確に理解できる、道元禅師の宗派意識である。同じことは「自証三昧」巻にもいえる)、「合血の儀」くらいのことである。ただし、上記引用文に、「諸仏および七仏のかきつたへられける嗣書の儀」とあることには、注意をしておきたい。つまり、『嗣書』とは、七仏もそこに入るべきだといえる。何故ならば、書き伝えられてきたのであり、また、同巻に於いて、釈迦牟尼仏の迦葉仏からの面授嗣法について説くためである。現行の『嗣書』はそのような意味で、不明なところが多い。

さて、本題に戻るが、「過去七仏之儀式」という観点で、このような文脈も見てみたい。

 世尊一日、阿難に勅して、食時将に至って、汝、当に入城持鉢すべし。
 阿難、応諾す。
 仏云く、「汝、既に持鉢す、須く過去七仏の儀式に依るべし」。
 阿難、便ち問う、「如何なるか是、過去七仏の儀式」。
 仏、阿難を召す。
 阿難、応諾す。
 仏云く、「持鉢し去れ」。
    『真字正法眼蔵』174則

出典は、『宗門統要集』等になるようだが、禅宗で伝える仏伝の一、といえる。よって、この内容も、完全に禅宗的内容である。ここでいわれている「過去七仏の儀式」というのは、達意的に申し上げれば、仏法の云為としての持鉢、ということである。そもそも、食事の時間(これは、集める時間と食べる時間両方を指す)になって、人が住む城に入り、そこで持鉢(托鉢)することは、伝統的な仏教であれば尋常の作法である(日本では古来より成立した例しがないが)。

ここでは、それを敢えて、世尊が阿難尊者に「勅」していることが肝心で、しかも、それを阿難が「応諾」していることが、この一則を捉える勘所である。要するに、仏勅に応諾する、それが過去七仏の儀式である。では、仏勅に応諾することとは何か?それがまさに、「持鉢」だったのである。ただ、それだけのことであるが、この仏勅に応諾が、仏法の云為としての持鉢であると会得できない場合、結局は、仏勅・仏法・持鉢が個別的事象として、バラバラになってしまう。それが、分別である。だが、仏説とは無分別である。よって、それらの分別を絶したところで、仏勅に応諾しての持鉢、それが仏法の云為としての持鉢で無くてはならないのである。

さて、無分別として、仏勅に応諾すること、それは、釈迦牟尼世尊に限った話ではなく、まさに、過去七仏の儀式である。仏法の云為である以上、特定の仏のみに依拠しない、七仏通誡としての勅である。この一則は、そのような無分別としての仏法の云為を、如何にして、我々が個として受け止め、それを日常の「行」に、応用していくかを示したものといえる。転じていえば、日常の行に応用されゆくところに、七仏の儀式があるともいえる。よって、「持鉢し去れ」なのである。

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