先日、拙僧の家のポストに、某霊園運営業者から「墓地いりませんか?」のチラシが投げ込まれていました。拙僧、一応、多分、宮城県栗原市内にある曹洞宗寺院の住職になる予定なので、そのまま死んだら、そちらで埋葬していただけるのでしょう、まともな弟子さえいれば(笑)
で、その寺には、あの「岩手・宮城内陸地震」からの復興がなった、住職専用墓地がありますので、何てことはなく「墓地いりません」という話。というか、「墓地分譲用土地、ちょっとだけ余ってます」という話で終わりそうなのですが、そのチラシに気になる記述がありました。そこでは「宗派は問いません。ただし、在来仏教に限ります」という一文があったわけです・・・在来仏教?こりゃまた聞いたことのない単語があるなぁ、とか思い早速ネットで検索かけるとこんなサイトがありました。
【霊園・墓地検索サイト『ハナミズキ』 在来仏教各宗派って何?】
多分、この業界では良く用いる表現で、しかも、世間的には浸透していないので、ちゃんとQ&Aがあるっていう寸法です。で、その内容は以下の通り(無断引用しています)。
A. 浄土宗、浄土真宗、曹洞宗、天台宗、真言宗、臨済宗、黄檗宗[おうばくしゅう]、時宗、律宗、日蓮宗、華厳宗、法相宗[ほっそうしゅう]、融通念仏宗[ゆうずうねんぶつしゅう]の13宗のことを一般的に指します。
なにやら、成立年代や、宗派の規模や、五十音順といった基準もないメチャクチャの並びで、そればっかり気になりますが、以上の13宗のことを「在来仏教」というらしいです。まぁ、もちろん、浄土宗にも長い歴史の中で分派した様々な派がありますし、浄土真宗にも、臨済宗にも、日蓮宗にも、法相宗にも、分派した形跡がありますから、その分派先も、一応オッケーだと考えておいて、結局この13宗というのは、明治初年までには日本に存在していた仏教宗派ということになるのでしょう。拙僧が、このブログで「日本仏教」という括りで表現しているのも、ここでいわれる「在来仏教」とほぼ同じだったりします。
実は、最近、ある人と「日本仏教」という話をしていたら、拙僧の思い描く定義自体に問題があることが分かってきたのです。まず、日本にある仏教系宗教法人をして、日本仏教というのなら、明治時代以降、特に戦後になって多く日本に入ってきたような、東南アジアやチベット仏教教団も入ってしまうということ。拙僧は、これは日本仏教ではなく、ただの新興宗教であると思っています。無論、その地元ではそれなりに歴史があるのでしょうが、所変われば、歴史も作り直しというのが実際のところでしょう。我々曹洞宗も、「海外開教(国際布教)」を行っていますけれども、当該地域では「新興宗教」に過ぎません。
次に、そもそも仏教自体が中国や朝鮮半島を経由して入ってきた「外来宗教」であるという事実があるので、「日本仏教」という言葉は、さも日本人が生み出した仏教であるかのような印象を与えかねない、という話だったのです。
そうなってくると、今回見た「在来仏教」という方が、或る程度の歴史性も加味されていて、しかも、地域的にも限定される用語なので、使いやすいかな?とか思うわけです。でもなぁ、なんだか「土着化宗教」みたいなイメージにもなってしまうんですよね。いや、今の欧米のキリスト教だって、本来は中東から出た宗教ですから、全てどこからかやってきて、土着化したわけです。その意味では、土着化した宗教という発想から外れる宗教の方が少ないでしょうから構わないのですが、それよりも、こう、日本という国の中で、固有に発達した仏教というイメージを作りたくて、「日本仏教」なわけです。それを「在来仏教」とかやられると、別になってしまう・・・
なんか、良い用語はないですかね。こんなことを話していたら、別の知り合いからは、仏教は本来、ゴータマ=ブッダの教えから始まっているんだから、「仏教」で良いんじゃないの?という指摘。或る意味で、道元禅師が『正法眼蔵』「仏道」巻で述べられた、「禅宗」とか「五家」とかいう名称の否定を行ったのと同じ雰囲気のあるフレーズで、拙僧的には「鋭い・・・」とか感心したのですが、本当にそれで済むのなら、これまでの1500年近くに及ぶ日本での仏教の歴史が、全て無用になってしまうので、却下。
いつも思うんだけど、原理ばっかり学ぶ人って、その後、その原理が変容してきたという「歴史的事実」を見ようとしないんだよね。そして、その「歴史的事実」がある以上、「原理」というのも、時間・空間に限定的だという事実も見ようとしない。これって、杜撰な学びだと思うんだけど・・・まぁ、些末だから拘らなくても良いか。
で、拙僧的には、「日本仏教」というのは、某霊園業者が使う「在来仏教」と同じ定義になりますけど、その後者の用語が嫌なので、同じ内容でありつつ「日本仏教」という言い方をするようにします、と宣言して終わります。
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これまでの読み切りモノ〈仏教9〉は【ブログ内リンク】からどうぞ。
で、その寺には、あの「岩手・宮城内陸地震」からの復興がなった、住職専用墓地がありますので、何てことはなく「墓地いりません」という話。というか、「墓地分譲用土地、ちょっとだけ余ってます」という話で終わりそうなのですが、そのチラシに気になる記述がありました。そこでは「宗派は問いません。ただし、在来仏教に限ります」という一文があったわけです・・・在来仏教?こりゃまた聞いたことのない単語があるなぁ、とか思い早速ネットで検索かけるとこんなサイトがありました。
【霊園・墓地検索サイト『ハナミズキ』 在来仏教各宗派って何?】
多分、この業界では良く用いる表現で、しかも、世間的には浸透していないので、ちゃんとQ&Aがあるっていう寸法です。で、その内容は以下の通り(無断引用しています)。
A. 浄土宗、浄土真宗、曹洞宗、天台宗、真言宗、臨済宗、黄檗宗[おうばくしゅう]、時宗、律宗、日蓮宗、華厳宗、法相宗[ほっそうしゅう]、融通念仏宗[ゆうずうねんぶつしゅう]の13宗のことを一般的に指します。
なにやら、成立年代や、宗派の規模や、五十音順といった基準もないメチャクチャの並びで、そればっかり気になりますが、以上の13宗のことを「在来仏教」というらしいです。まぁ、もちろん、浄土宗にも長い歴史の中で分派した様々な派がありますし、浄土真宗にも、臨済宗にも、日蓮宗にも、法相宗にも、分派した形跡がありますから、その分派先も、一応オッケーだと考えておいて、結局この13宗というのは、明治初年までには日本に存在していた仏教宗派ということになるのでしょう。拙僧が、このブログで「日本仏教」という括りで表現しているのも、ここでいわれる「在来仏教」とほぼ同じだったりします。
実は、最近、ある人と「日本仏教」という話をしていたら、拙僧の思い描く定義自体に問題があることが分かってきたのです。まず、日本にある仏教系宗教法人をして、日本仏教というのなら、明治時代以降、特に戦後になって多く日本に入ってきたような、東南アジアやチベット仏教教団も入ってしまうということ。拙僧は、これは日本仏教ではなく、ただの新興宗教であると思っています。無論、その地元ではそれなりに歴史があるのでしょうが、所変われば、歴史も作り直しというのが実際のところでしょう。我々曹洞宗も、「海外開教(国際布教)」を行っていますけれども、当該地域では「新興宗教」に過ぎません。
次に、そもそも仏教自体が中国や朝鮮半島を経由して入ってきた「外来宗教」であるという事実があるので、「日本仏教」という言葉は、さも日本人が生み出した仏教であるかのような印象を与えかねない、という話だったのです。
そうなってくると、今回見た「在来仏教」という方が、或る程度の歴史性も加味されていて、しかも、地域的にも限定される用語なので、使いやすいかな?とか思うわけです。でもなぁ、なんだか「土着化宗教」みたいなイメージにもなってしまうんですよね。いや、今の欧米のキリスト教だって、本来は中東から出た宗教ですから、全てどこからかやってきて、土着化したわけです。その意味では、土着化した宗教という発想から外れる宗教の方が少ないでしょうから構わないのですが、それよりも、こう、日本という国の中で、固有に発達した仏教というイメージを作りたくて、「日本仏教」なわけです。それを「在来仏教」とかやられると、別になってしまう・・・
なんか、良い用語はないですかね。こんなことを話していたら、別の知り合いからは、仏教は本来、ゴータマ=ブッダの教えから始まっているんだから、「仏教」で良いんじゃないの?という指摘。或る意味で、道元禅師が『正法眼蔵』「仏道」巻で述べられた、「禅宗」とか「五家」とかいう名称の否定を行ったのと同じ雰囲気のあるフレーズで、拙僧的には「鋭い・・・」とか感心したのですが、本当にそれで済むのなら、これまでの1500年近くに及ぶ日本での仏教の歴史が、全て無用になってしまうので、却下。
いつも思うんだけど、原理ばっかり学ぶ人って、その後、その原理が変容してきたという「歴史的事実」を見ようとしないんだよね。そして、その「歴史的事実」がある以上、「原理」というのも、時間・空間に限定的だという事実も見ようとしない。これって、杜撰な学びだと思うんだけど・・・まぁ、些末だから拘らなくても良いか。
で、拙僧的には、「日本仏教」というのは、某霊園業者が使う「在来仏教」と同じ定義になりますけど、その後者の用語が嫌なので、同じ内容でありつつ「日本仏教」という言い方をするようにします、と宣言して終わります。
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