Quantcast
Channel: つらつら日暮らし
Viewing all articles
Browse latest Browse all 15728

今日は釈尊涅槃会です(平成23年度版)

$
0
0
今日2月15日は、北伝仏教(インドから北の方向、つまり中国など東アジアに伝来した仏教の系統のこと。東南アジアを中心とする南伝仏教とは一線を画する)にて、インドで仏教を開かれたゴータマ=ブッダ(釈迦牟尼仏、釈尊)が般涅槃された日(お亡くなりになった日)ということで、壮大な「ご法事」を行っています。それを、「釈尊涅槃会」といっているわけです。我々曹洞宗では、永平寺を開かれた道元禅師以来連綿とこの行持を全国で行っています。これまで拙ブログでは、道元禅師が行っておられた涅槃会を紹介しており、以下のような経緯で行ってきました。出典は、道元禅師が一生涯にわたって行われた説法を集めた語録である『永平広録』です。

・巻1-121上堂(本年使用)
・巻2-146上堂(平成22年既出
・巻3-225上堂(平成20年既出
・巻4-311上堂(平成21年既出
・巻5-367上堂(平成19年既出
・巻6-418上堂(平成18年既出
・巻7-486上堂

以上のように、既に5つの上堂を用いています。そこで、今年はこれまで用いていない上堂を用いて、釈尊の般涅槃に思いを馳せたいと思います。

●『永平広録』巻1-121上堂

【原文】

涅槃会上堂。云。少雨多風月似彎。落華流水一団欒。瞿曇夜半現神変。方語円音唱涅槃。下座。

【訓読】

涅槃会の上堂に云く。少雨多風、月、彎に似たり。落華流水、一団欒なり。瞿曇、夜半神変を現ず。方語円音、涅槃を唱う、と。下座。

【訳文】

 涅槃会の上堂に道元禅師が言われるには、雨が少なく強い風が吹く夜に、空に掛かる月は彎のようである。華が落ち水に流れ、一まとまりである。ゴータマは、夜半に神変を現じられる如くに涅槃を示された。インドの言葉と素晴らしき音で、『涅槃経』を説かれた。
 そのようにいわれると、道元禅師は座を下りられた。
    拙僧ヘタレ訳

【解説】

時期的には、仁治4年(1243)2月15日の涅槃会上堂であると考えられています。まだ、京都の興聖寺におられた頃に行われた上堂です。一応、道元禅師は興聖寺にて11年、弟子の育成を行われたと考えられていますが、「涅槃会」の上堂として記録されているのは、わずかこの一則だけとなります。

なお、涅槃会を始めとして、いわゆる釈尊に関わる三仏忌について、道元禅師は成道会も、降誕会も、経論からその伝記的記述を引用しながら論じているように思われるのですが、殊に涅槃会については、まさに釈尊の生涯を描く『仏本行集経』や、『大般涅槃経後分』などを引くのかと思っていたのですが、どうにもそうではないようです。

この上堂の内容を見ていくと、「少雨多風」を用いていますが、これは中国の禅語録にも多く見ることが出来て、「月似彎」と絡んで、「月」を意味する言葉になります。涅槃会の夜は、旧暦の「2月15日」に当たりますので、この日は満月です。あれ?だとすると、この語句は不適当な気もしますね。彎月というのは、つまりは「弦月」になるわけです。よって、満月ではありません。ただ、道元禅師はこれを採用されています。理由は直接には分かりませんが、先達の学僧による註釈を見てみたいと思います。

仏の涅槃の悲しみを、天地も感じて、如此あるぞと也。
    斧山玄鈯『永平広録註』

つまり、江戸時代の学僧・面山瑞方師の門人であった斧山の註記を参照すると、満月が弦月になってしまった理由は、仏の涅槃を感じて、悲しんでいるためだとされています。悲しみのため、全分でいられず、欠けてしまったのです・・・いや、これは月食か?月食は、満月の時にしか起きないと聞いていますが、釈尊の般涅槃の時に、月食が起きた可能性があるのかもしれません。でも、『大般涅槃経後分』にはそんな記述はないようですな。『仏所行讃』にも無いようですが、何かありそうですけどね。

さて、「落華流水」でありますが、華は悟りに喩えられたものであり、同時に仏陀そのものにも喩えられています。つまりは、仏陀が水に落ち、水と一緒だというのです。この水とは、法そのものです。いわば、華が水に落ちる様子に、仏陀が法そのものだとしているといえましょう。そして、瞿曇は夜半に勝れた神変を現し、そして梵語と円かなる音でもって、『涅槃経』を説かれ、最後の説法を終えたと、道元禅師はいわれたわけです。

我々も、その釈尊涅槃の現場をよくよくイメージし、追慕の念を強くしたいものです。ただ、そのために、仏典を読むだけではなくて、それを絵図にした「涅槃図」などを参照されると良いでしょう。各地の曹洞宗寺院で見られるはずですので、菩提寺などにお問い合わせください。

この記事を評価して下さった方は、にほんブログ村 哲学ブログ 仏教へにほんブログ村 仏教を1日1回押していただければ幸いです(反応が無い方は[Ctrl]キーを押しながら再度押していただければ幸いです)。

これまでの読み切りモノ〈曹洞宗6〉は【ブログ内リンク】からどうぞ。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 15728

Trending Articles