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正月早々「八大人覚」巻を学んでみる

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今日は、道元禅師最期の説示ともされる『正法眼蔵』「八大人覚」巻を学んでみたい。何故かといえば、同巻奥書にこう書いてある(訓読は拙僧)。

建長五年正月六日、永平寺にて書す。

道元禅師がこう書いておられるので、同巻は御遷化されるその年、1253年1月6日に書いたことになる。まぁ、陰陽の暦換算すると、来月の話になってしまうのだけれど、それもめんどくさいので、今日記事にしてしまうことにしたい。それにしても、何故、これまで書いてこなかったのか?拙僧自身、不思議である。

なお、気にしたいのは勿論、同巻後半の、道元禅師による説示で或る。前半は、ただ経文からの引用文だけなので、八大人覚の一々の項目を挙げた後で、道元禅師がどう説示されるかが問題なのだ。そこで、拙僧的に気になる幾つかの文脈を採り上げてみたい。

このゆえに、如来の弟子は、必ずこれを習学したてまつる。これを修習せず、しらざらんは、仏弟子にあらず。これ如来の正法眼蔵涅槃妙心なり。

道元禅師は、如来の弟子であるものは必ず八大人覚を習い学ぶ必要があるという。それは、如来の正法眼蔵涅槃妙心だからである。そうなると、道元禅師の説示は12巻本に到っても『正法眼蔵』であることは疑いない。以前からいわれた、75巻本と12巻本との関係については、常に思うに、優劣の関係では無いのだろうと思う。そもそも、思想的な背景が異なっているのだろう。

しかあるに、いましらざるものはおほく、見聞せることあるものはすくなきは、魔嬈によりてしらざるなり。また宿殖善根すくなきもの、きかず、みず。むかし正法・像法のあひだは、仏弟子みな、これをしれり、修習し、参学しき。いまは千比丘のなかに、一・両、この八大人覚、しれるものなし。あはれむべし、澆季の陵夷、たとふるにものなし。如来の正法、いま大千に流布して、白法、いまだ滅せざらむとき、いそぎ習学すべきなり、緩怠なることなかれ。

道元禅師は、「八大人覚」の教えについて、聞くことが出来なかった者はそれまでの善行の功徳が少ないと明言されている。それはつまり、末法の世ということのようである。何故ならば、正法・像法の間は、仏弟子は皆知っていたが、今は違うからである。だが、末法とはいえ、如来の白法は未だ滅していない。よって、その間に急いで学ぶべきだというのである。

仏法にあふたてまつること、無量劫にもかたし。人身をうること、またかたし。たとひ人身をうくるといへども、三洲の人身よし。そのなかに、南洲の人身すぐれたり、見仏・聞法・出家・得道するゆえなり。

そもそも、仏法に逢うことは無量劫という無限の時間をかけても難しい。しかし、南洲(今の我々が生きる、この南閻浮提のこと)の人が最も良い機会を得て、仏に見え、法を聞き、出家し、仏道を得ることが出来るのである。であるならば、ここで聞かれるべき「法」とは何なのか?

如来の般涅槃よりさきに涅槃にいり、さきだちて死せるともがらは、この八大人覚をきかず、ならはず。いまわれら、見聞したてまつり、習学したてまつる、宿殖善根のちからなり。いま習学して生生に増長し、かならず無上菩提にいたり、衆生のためにこれをとかむこと、釈迦牟尼仏にひとしくして、ことなることなからむ。

そこで、最後にこの説示である。この「八大人覚」は、我々にとって、仏陀最後の説法であると考える。よって、道元禅師が指摘される通り、如来よりも先に涅槃に入り、先立って死んでしまった弟子は、聞くことが出来なかったという。だが、『遺教経』の説示を通して、今の我々は習うことが出来た。それは、これまでの善行の功徳の力だという。ここで八大人覚を習い、繰り返しの人生の中でそれを更に長じれば、必ず無上菩提に到ることが出来、衆生のために八大人覚を説くことは、釈迦牟尼仏と等しく、異なることがないようにしなくてはならない。

拙僧つらつら鑑みるに、この説示がある以上、やはり、枕経などで『遺教経』をお唱えするので在れば、「八大人覚」を外すべきでは無い、と思う。或いは、一部地域で行われているように「八大人覚」巻をお唱えしても良いと思う。然るに、「八大人覚」とは、これ自体が行というわけではない。だが、やはり阿耨菩提の成就ということも含めて、そこに到るためのあらゆる契機を拡大する要素として、これらの8つがあるという理解で良いと思う。

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