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江戸期写本『出家受戒略作法』について

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とあることから、江戸時代末期頃の写本だと思われるが『出家受戒略(畧)作法』を入手した。そこで、紹介しながら差定の意義などについて検討し、曹洞宗系の方法との比較などを行ってみたい。

なお、差定の項目名などは、拙僧の手元にある写本の表記に従う。

・着座(塗香・浄三業・三部・被甲・加持香水)
・次三礼(三帰礼文)
・次表白
・次教拝氏神国王父母
・次唱偈(流転三界中……)
・次師以香水灌其人之頂誦偈言(善哉大丈夫……)
・次教礼十方仏誦偈言(帰依大世尊……)
・次剃髪(毀形守支節……)
・次湯帷乍着閑所行俗服脱可着衣師前来(法名授与伴う)
・次師授袈裟(大哉解脱服……)
・次教自慶偈唱(愚者[遇哉]値仏者……)
・次出家者礼仏并師座
・次師授戒
 先三帰
 次戒相(沙弥十戒[尽形寿])
・次教発願
・次神分(般若心経・大般若経名・薬師宝号・観音宝号・釈迦牟尼宝号・供養浄陀羅尼)
・次廻向
・次下礼盤
(末尾に十重禁を載せるが、『梵網経』系だと思うが独自のもの)

以上である。幾つかは曹洞宗系の作法と異なっていることが分かるが、全体の流れとしてはほぼ同じであるともいえる。要するに、表白・礼拝・唱偈・剃髪・着替え・授袈裟・授戒といった流れが一致しているのである。ただし、各部分を詳しく見ていくと、相違点も大きい。そして、その内に検討してみたいと思うのだが、『法苑珠林』巻22「剃髪部第三」の流れを、ほぼ丸ごと踏襲していることが分かる。

その点から、独自性があるのは、「法名授与」に関する部分と、「授戒」以降の作法であろうと思う。『法苑珠林』では「法名授与」についての記載が無く、授戒については「三歸五戒等」とあって、上記作法でいうような「三帰・沙弥十戒」とは異なっているのである。なお、曹洞宗系の場合とも異なっていて、我々の場合は道元禅師の頃は「三帰・五戒・沙弥十戒・三聚浄戒・十重禁戒」であった。江戸時代に「五戒」がまず無くなり、更に「沙弥十戒」についても批判される場合があって、現行の作法では「三帰・三聚浄戒・十重禁戒」である。よって、この辺は各宗派に於ける戒思想などの関連もあるのだろう。

それから、「発願」についても独自のものであるようだし、「神分」については何のために行われるのかが分からない。曹洞宗式の作法に当て嵌めることが出来ないためである。

ところで、今回の作法書だが、宗派としてはどちらが該当するのだろうか?拙僧は最初、陀羅尼などを多用することから密教系かとも思ったが、どうも真言宗系ではない印象である。もしかすると、天台宗系だろうか?大日如来などへの言及がほとんど無く、釈迦仏への言及は多い。ただし、『法華経』の話は出てこない。また、恵心僧都源信による『出家授戒作法』との関連もあるのだが、細部は異なっている。

よって、現段階の結論としては、天台宗系の一作法書ということのみ申し上げておきたい。

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